海外からの模倣品流入に対する規制の強化 ‐ 商標法・意匠法の改正

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1.海外事業者から個人への模倣品流入の増加

最近ではインターネットを通じて海外事業者から個人が直接商品を購入することが増えています。これに伴い、個人が模倣品をインターネットを通じて輸入することも増えてきています。税関が把握する知的財産権侵害貨物は、2019年(令和元年)には2004年(平成16年)と比較して、差止件数が大きく増加している(約1万件から約2、3万件)のに、差止点数が同程度(約100万点)であることから、顕著に小口化しており、これは個人輸入が増えているからだとみられます。そして、差し止められる物件の95%を超える大多数は商標権侵害を理由とするものです。

従前の商標法では、標章を付した商品を輸入することは標章の使用にあたる(商標法2条3項2号)ものの、業としての使用でなければ商標権侵害とはならない(同法2条1項1号、25条)ため、模倣品の個人使用目的の輸入については商標権侵害にはなりませんでした。税関では、知的財産権侵害物品は「輸入してはならない貨物」として没収等の対象となる(関税法69条の11、1項9号及び2項)ため、知的財産権侵害物品であるかどうかを認定手続により認定しています(同法69条の12)。その手続では、税関が知的財産権侵害物品の疑いのある貨物を見つけた場合には、権利者と輸入者に手続開始の通知がなされます。通知を受けた輸入者が、個人使用を主張して知的財産権侵害物品であることを争う場合には、輸入が許可されることになりますが、争わない場合には、没収等がなされます。従前は模倣品の輸入について争う輸入者は大変少なかったのですが(2008年(平成20年)には500件程度)、2018年(平成30年)には、6000件に迫る輸入者が争い、その理由の大半は商標権侵害物品に
ついて個人使用目的であるとするものであり、結果、輸入が許可されています。また、諸外国をみても、アメリカでは古くから個人使用目的での模倣品についても商標権侵害物品、特許権侵害物品などとされ、共に輸入することができず、EUでは、従前輸入が認められてきましたが、2014年(平成26年)の欧州連合司法裁判所判決2によって、アメリカと同様の規制となりました。このような状況で、2020年(令和2年)には、多くの模倣品が個人へと流入することに歯止めをかけなければならないということがコンセンサスとなり、その方策が検討されてきました。

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