美術館の工事について同一性保持権の侵害が争われた仮処分命令申立事件

Back to All Thought Leadership

本件の仮処分命令申立事件は、ある美術館(本件美術館)及びその庭園(本件庭園)の設計者とされる債権者(X)が、本件美術館及び本件庭園の改築工事(本件工事)の実施を計画している地方公共団体である債務者(Y)に対して、Xの著作者人格権(同一性保持権1)が侵害されるおそれがあると主張して、著作権法112条1項に基づき、本件工事の差止めを求めた事案です。

まず、東京地裁は、本件美術館等の著作物性の判断について、「美術」の「範囲に属するもの」に該当するか否かを判断するためには、建築物としての実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えた部分を把握できるか否かという基準によるのが相当であるとしました。加えて、「著作物」は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」でなければならないから、建築物が「建築の著作物」 として保護されるためには、同要件を充たすか否かの検討も必要となり、その要件のうち、創作性については、著作権法の目的に照らし、建築物に化体した表現が、選択の幅がある中から選ばれたものであって保護の必要性を有するものであるか、ありふれたものであるため後進の創作者の自由な表現の妨げとなるかなどの観点から、判断されるべきであるとしました。

その上で、東京地裁は、本件美術館の有する次の構造について評価し、建物としての実用目的を達成するために必要な機能に係る構成とは分離して、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握することができ、全体として、「美術」の「範囲に属するもの」と認められ、かつ、これらの構造の中には、設計者が選択の幅がある中からあえて選んだ表現が認められるとしています。

Please click here to read more.

 

Sign In

[login_form] Lost Password